眠れる森の彼女

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その日の昼休みは俺も吏那も互いにぎこちなかった。


「私がよく読むのはミステリー小説です」


ぎこちないと言っても会話は普通に交わしている。


美術室は今日も静かだ。


「意外。吏那は少女漫画とかが好きそうに見える」

「そういうのは、ちょっと苦手です。夢見がちっていうか……」

「へぇ。そういうもんか。ま、俺も読んだことねぇけど」

「私には絶対こんなこと起こらないんだろうなって主人公に嫉妬しちゃうんです……。卑屈だなーって自分でも思うんですけど」


そりゃ卑屈ってより、物語に入り込みやすいだけだろう。


その癖、現実的。