眠れる森の彼女

椎名、気がついてよ。


紅月さんは純粋に見えたって、裏で何してるのかわからない子だよ……。


絶対に騙されてる。


椎名は無気力で無愛想でも情が深いから、ハブられてる紅月さんを放っておけなかったはずだ。


彼女の自業自得なのに。


ああ、嫌な感情……。


すごく自分が嫌いになる。

だけど。


紅月さんはもっと嫌い。


『ふざけんな! 吏那に手ぇ出すんじゃねぇよ!』


椎名はあんなに独占欲を丸出しにしたりしなかったし、大声を出したりしなかった。


お願い。


私に振り向いてなんて言わないから、椎名は変わらないで……。


あの子のものにならないで……。