眠れる森の彼女

sideナミ


織原くんは各務の肩に手を置いてから、

「待てよ。万威」

と椎名の隣へ追いついていく。


廊下には椎名が残した余韻が消えなくて、場の空気をも掌握してしまう椎名が憎らしい。


「椎名っち、恐すぎ。あんなに怒んなくてもいいじゃん。ちびるかと思った」


隣で各務が膨れっ面をしている。


「……らしくない」

「ナミゾー、どうした?」

「あんなの、椎名らしくない……」


椎名はかっこいいだけじゃなくて、いつもクールで、冷めてて……。


同い年の男子たちとはどこか一線を画している、誰も寄せつけないような確固たる大人びた諦観を感じさせた。


鋭い眼差しは目つきが悪いというよりはどこか謎めいて、色っぽい。


何より椎名だけが有する独特の雰囲気に夢中な女子は桜高以外にだってたくさん居る。