眠れる森の彼女

付き合ってられねぇ。


降下していく機嫌に合わせて足取りも雑になる。


「儚げで、愛らしくて、清らかで、吏那ちゃんはマジで俺の理想のタイプ!
椎名っちー! 俺に吏那ちゃん紹介……」

「ふざけんな! 吏那に手ぇ出すんじゃねぇよ!」


振り返って恫喝に近い形で大声を出していた。


気づけば、各務・織原・ナミだけじゃなくて、廊下を行き交っていた生徒たちが、みな瞠目して俺を見ていた。


何を感情的になってんだ、俺は……。


鬱陶しい視線をやり過ごして、先に進む。


「各務は馬に蹴られるといいよ」

「馬?!」

「人の恋路を邪魔するヤツは何とやらってね」