シャルンは安心して、父親に声をかけようとした。

すると父親が、

「待ってくれ!」

と叫んだ。

貴族の男がこちらを振り返る。

どうして父親はあの男を呼び止めてしまったのだろう。

シャルンは不思議に思った。

すると父親は、

「この子を、この子を渡すから、どうか、家を……救ってくれ……」

と言った。

すると貴族の男が、

「そうですか!さぁこっちへおいで?」

と、満面の笑みでシャルンの腕を引っ張る。

シャルンは怖くて怖くて、父親の足にしがみついた。

しかし、貴族の男に無理矢理引き剥がされる。

それでもシャルンは、

「パパン!パパン!パパン!」

と、必死に叫ぶ。

しかし、父親はシャルンを取り戻そうという目はしていなかった。

ぼんやりとしている。

「パパン!パパン!パパン!」

しかしシャルンは、父親が見えなくなっても叫び続けた。