「うちの従業員に何か御用ですか?」



腕を掴んでいたのはお兄ちゃんだった。


口元はにっこり笑ってるのに目がまったく笑っていない。


身長180センチ以上のお兄ちゃん。それだけで迫力は増す。



「お、俺たちはただ…。先にこのトナカイが…」


「警察呼んでもいいんですよ? 一部始終は周りの方が見てくれてるはずですから」



騒ぎに立ち止まって見ていた通行人がお兄ちゃんの言葉にコクコクと頷いている。


お兄ちゃんの迫力と警察という言葉に怖じ気づいた男たちは「すみませんでしたぁぁ」と足を取られながら逃げるように去っていった。



「怖かったぁ…」



一気に緊張の糸が途切れ、その場に座り込むあたし。



「大丈夫か? 怖い思いさせたな」



お兄ちゃんの表情は妹を心配する優しいい表情に変わっていて、あたしの頭をぽんぽんしてくれる。



「トナカイくんも、妹を守ってくれてありがとう。さ、ちょっと早いけど今日はもう上がっていいよ」



お兄ちゃんの手を掴んで立ち上がり、そのままお店の中に戻った。