「へ?」


素っ頓狂な声が出てしまった。


「とぼけないでよ、もー」


いつ私がとぼけたの?


私の目の前にいるこの人は何を言ってるの?


「シュン君のこと、好きなんでしょ」


「勘違いしないで!別にそんなこと無いんだから!」


ようやく状況を理解できました。


つまり、この私の前にいるの人物…というのは可哀想か。


私の前にいる人物ーリノーは私がシュン君を好きだと勘違いしてるみたい。


条件反射的に否定の声をあげたけど、リノはこういうのを全く受け入れない人だからなあ…


参った、どうしよう。


そういえば、さっきから目線が痛い。


そんなに注目されるようなことしてな……さっき大声出し過ぎたからか。


ああ、窓の外の青々しい空が綺麗……。


「え、マジ?ミクってシュン君の事好きなの?」


ああもうほらほら!女の子達が集まってきたよ!


ちなみにミクというのは私の名前。


「そんなんじゃないもん。リノ、もう一回聞くけど何か勘違いじゃない?」


私がそう聞くと、リノはニヤニヤした表情をする。


「だって、ミクってシュン君にいっつも喋りかけてるじゃん。他の男子には話しかけないのにさ」


……何だ、そんなこと。


それなら誤解を解くのは簡単そう。


「シュン君とは、」


「それにシュン君もミクのこと好きらしいし。相思相愛じゃん、告っちゃえば?」


さらりとそんな根の葉もない発言をするな!


あと私の言葉を遮らないで!


心の中でツッコミを入れた。


現実世界にもツッコミを入れたい!


「それも何かの誤解だって、ね?シュン君とはただ単に趣味が合うだけだし」


「ミクの照れ隠しいただきましたぁーっ!」


何をどう勘違いしたら私の発言が照れ隠しになるんだろう。


リノは、やっぱり思い込みが激しいところがある。


周りにいる女の子達もそんなリノの気迫に押されて、私がシュン君のことが好きだと思ってるだろう。


「やっぱりシュン君好きなんだ」


ほらやっぱり勘違いしてる!


「違う違う、リノの誤解だよ。シュン君とは趣味とか話が合うだけで、好きとか嫌いとかそういうのは混じってないの。それに、私好きな男の子には逆に話しかけられないタイプだと思うし」


私は言える言葉の範囲でシュン君が好きじゃないと弁解するが、このお年頃の女の子はやっぱり色恋沙汰がお好き。


普段は皆リノじゃなくて私の味方なんだけど、こういうことになると途端に目の色を変えてはしゃぎだすから困るんだよなあ。


いや、私も女子だけどさ。


「俺の名前聞こえたんだけど、何話してんの?」


突如頭上から降りかかってきた声。


その声の持ち主は、今一番来てほしくない人ランキングで見事一位に輝いているシュンでした。