ホテルに帰り、部屋に戻る。その間、慎一は私の手を、決して離そうとはしない。
私の荷物を無造作にベッドに放り投げた慎一。

相変わらず離されない手を、私はただただ見つめている…と。

振り返った慎一は、その手を引っ張り、抱き寄せた。

「…慎一」
「…まだ、なんも始まってない」

…始まってない?

「…だから、俺の傍にいろ」
「…意味わかんないよ」

「…とにかく、まだ、ロングバケーションは終わってない」

「…」

…困るのに、嬉しいと思ってしまうこの矛盾に、私はどうして良いかわからなかった。