立ち直れなかった。

目はウサギのように赤く、腫れている。

何とか化粧を施してごまかしはしたけど。


…利き手の右手も、相変わらず腫れていて。

湿布を貼って、軽く包帯を巻いて、着替えを済ませた私は、

コーヒーだけ飲んで、重い足取りで出社した。


「…どうしたの、その顔?」

同僚の鈴が、眉間にしわを寄せ、私の顔をマジマジと見つめている。


…化粧で隠せないほど、腫れているのか。

私は思わず深い溜息をついた。


「しかも、その手だって、包帯なんかしちゃって」

「ちょっと、彼氏ともめた…て言うか、別れた」

「・・・はぁ?!」

驚く鈴をしり目に、私は自分の持ち場に座った。


「お前、ひっでー顔。その顔で、受け付けとか止めろよ?」

「高志(たかし)そんなに酷いかなぁ・・・」


そう言って、営業兼ツアーの添乗員もしてる同僚。

宮崎高志(28)。

私は高志にニコッと笑って見せた。


「…気持ち悪いよ。今日は、鈴に受け付け任せて、

裏方やってろ、いいですよね安藤さん」