「…ぅ・・ふぇ・・・」

「・・・・」

片手に携帯を持った美和が、必死に声を漏らさないように、

泣いていた。

俺は驚いて、美和を後ろからギュッと抱きしめた。

…ビクッ。

俺が入ってきていた事に気づいていなかった美和は、

急に抱きしめられ、体をビクつかせた。


「美和、何があった」

「・・・なんでも・・・ない」


「…泣いてるのにか?」

「何でも、ないったら・・・」

そう言いながらも、美和は泣き続けている。


「…美和」

「…元カレが」

「・・・ん?」


「この旅行に行く前に分かれた元カレが、結婚したんだって・・・。

しかも、デキ婚・・・笑っちゃう・・よね」

必至に笑って見せるけど、涙は止まる事を知らない。


「笑いたくもないのに、笑ってんな、バカ」

どうしようもなく胸が詰まって、オレは美和を抱きしめた。