…この日を境に、慎一は尚更私の傍を離れなくなった。

この男、絶対、私を女だって思ってないわよね。

・・・っていうか、私を害虫(他の女)から遠ざける為の

小道具か何かだと思っているに違いない。



「…あのさ、慎一さん」

「気持ち悪いな、呼び捨てでいい、呼び捨てで」

そう言って眉間にしわを寄せた慎一を見て、私も思わず眉間にしわを寄せる。


「だって、アンタの年齢なんて知らないし・・・

年上だったら失礼じゃない・・・人として」 


「お前の歳は?」

「…29よ」

「…じゃ、俺の方が、7つ上か」

…七つ上?!という事は、36歳?

もっと若いのかと思ってた、見た目年齢若すぎなのよ、この男。

…て言うか、この歳で女恐怖症とか、ちょっと怖い気が。

一体どんな女性遍歴を持っているのか・・・。



「七つも上なら、尚更ちゃんと呼ばなきゃいけないじゃない」

「…バカ言え、最初から、ナーナーで喋ってたくせに。

今更さん付とか気持ち悪いわ・・・」


「・・・あっそ」

確かに、ご立派な言葉使いだったことは認める。

・・・まあ、今更改まっても、気を遣うだけだし。

それに、この旅行が終わったら、お別れするんだし・・・いいっか。