君と、優しくて愛しい日々を。



彼が高二のときの冬っていったら…私とナツが初めて会った夏の、その後だ。

私がちょうど、ナツに会いたくて会いたくてたまらなくなってた頃。

そりゃ、あの時点では、私はまだ彼にとって『妹みたいな存在』だったけど。

彼女ができてた、なんて…


やっぱりショックを感じながら、「…そ、それで…?」と言い彼を見上げる。

完全に笑えなくなってる私を、ナツは面白そうに笑った。


「告られてさ、付き合う事になって。でも高三の夏休みに入る前に、別れた」

「…どうして?」

「志望校が違ったんだよ。次の春にはお互い地元から離れて、別々の県に行く事になってさ。俺は頑張ろうと思ってたけど、彼女の方が無理だった」

離れた後も続けられる自信がなかったその人は、そういう不安からどんどんナツとすれ違っていって。

「フラれた」と、ナツは苦笑いをして言った。


……私の知らない、ナツの時間。

私の知らない、『元カノ』の話。


「…そう、だったんだ」

再び俯いた私に、ナツは「でもな」と言って、私の手をぎゅ、と握りしめた。