「…………未海」
そのとき、ふいにナツの指が私の目元に触れた。
見ると、その指は濡れていて。
驚いて、彼を見上げる。
今にも涙をこぼしてしまいそうな私の右手を、ナツは優しく掴んだ。
「……ちょっと、話そっか」
そのまま指を絡ませて、握る。
穏やかに笑った彼は私の手を引いて、静かに歩き出した。
「……なんか、不安?」
に、と笑って、ナツが私を見下ろす。
私は握られた手の暖かさを感じながら、足元のコンクリートを見つめる。
ナツと、目が合わせられなかった。
「……私、子供っぽいなぁ、って。…全然、追いつかないな、って、思うの。ナツの大学には、きっともっと綺麗な女の人が、たくさんいるんだろうし」
唇を尖らせて言うと、頭上からクスリと笑い声が聞こえた。
「…俺が、そっち行っちゃうと思ってる?」
「………」
「行かないよ」
その言葉に、私はますます俯いて、頬を膨らませた。
…わかんないじゃん。
やだもん、私。



