君と、優しくて愛しい日々を。



……あ。

コウはすぐにいつも通りの表情に戻って、走り出したけど。

もしかしたら他のメンバーは、気づいてないかもしれない。

私は残りの二分間、やっぱりコウから目が離せなかった。





「コーウ」


前半が終わって、十分間の休憩であるハーフタイムに入った。


呼ぶと、コウは汗をぬぐいながら、私を見上げた。


「なに?」


いつも通りの穏やかな表情で、私を見つめてくる。

……こいつは、色々と隠すのが上手いから。

誰かが見抜いてやんないと。


「無理しちゃダメだよ」


てすりに頬杖をついて、私はそっけなく言った。

けど、コウは相変わらずキョトンとして、「別に無理してないけど…」なんて言いやがった。

…やっぱムカつく、こいつ。


「それ」


顎をくい、と動かして、今も痛んでいるはずの彼の左足首を指す。

コウがしばらくぽかんとしていたけど、やがてイタズラがバレた子供のように笑った。