……あ。
コウはすぐにいつも通りの表情に戻って、走り出したけど。
もしかしたら他のメンバーは、気づいてないかもしれない。
私は残りの二分間、やっぱりコウから目が離せなかった。
*
「コーウ」
前半が終わって、十分間の休憩であるハーフタイムに入った。
呼ぶと、コウは汗をぬぐいながら、私を見上げた。
「なに?」
いつも通りの穏やかな表情で、私を見つめてくる。
……こいつは、色々と隠すのが上手いから。
誰かが見抜いてやんないと。
「無理しちゃダメだよ」
てすりに頬杖をついて、私はそっけなく言った。
けど、コウは相変わらずキョトンとして、「別に無理してないけど…」なんて言いやがった。
…やっぱムカつく、こいつ。
「それ」
顎をくい、と動かして、今も痛んでいるはずの彼の左足首を指す。
コウがしばらくぽかんとしていたけど、やがてイタズラがバレた子供のように笑った。



