ナツが、不思議そうにこちらを見ている。
私は慌てて、「ごめん」と謝った。
「いいけど…どした?なんかあんなら言えよ?」
優しいナツは、心配そうに私を見つめてくれる。
私は「ほんとになんにもないよー」と笑って誤魔化した。
……ああ、嫌だな。
こんな風に心配かけちゃう私って、なんかすごく子供だ。
もっと、近づきたいんだけどな。
追いつき、たいんだけどな。
あの頃の、眩しい夏の日差し。
彼を想って駆けた、熱いコンクリートの坂。
彼のいる、愛しい愛しい青い海。
すべてに憧れて、夏が終わっても恋しくて、焦がれて。
また会いたい、話したい、追いつきたい。
そんな想いを募らせて、たくさんに努力を重ねた。
けどもう、あの頃とは違うんだ。
暑い気温も、生い茂る緑もないのに、私は今ナツといる。
電話をすれば出てくれたし、会いたいっていったら会いに来てくれた。
手を伸ばせば、届く。



