「うお、デカイなー」
入口の建物の隙間から見える、大きな観覧車をみあげて、ナツが声を出す。
バスに乗ってやってきたのは、県内でも有名な遊園地。
チケットを買って、中へ入る。
よくあるテーマパークだけど、アトラクションもたくさんあって、充分楽しめそう。
「ナツ、ここに来るの初めて?」
周りを見回しながら、尋ねる。
ナツは「いやー」と、中央に見えるでっかいアトラクションを見つめながら、答えた。
「がきんちょの頃に、親と来たことある。あんま覚えてねーけど」
「そーなんだぁ。私も、小学生のとき以来だよ。全然覚えてなーい」
マフラーに顔をうずめながら、笑う。
隙間から漏れた息は白くて、冬なんだなぁと実感した。
「寒い?」
息で手を温めていると、パーカーのポケットに手をつっこんでいたナツが、顔を覗き込んで来た。
少しドキッとして、慌てて「大丈夫っ」と首を振る。
「手袋、忘れてきちゃった。アハハ」
ナツと会うときは、いつも夏の格好だったし。
これからナツと会うんだーって思ったら、手袋とか頭になかった。
…なんて、ナツのせいにしちゃ悪いけど。



