『……“ ジェイド・バイン ”…?』
説明文には、リロザの言った通り『碧色』と書いてある。
描かれているのは、下向きの房がいくつも重なっている、見たことのない植物だった。
『碧色って、どんな色なんだ?』
『私も気になってな、学者に翡翠葛の色を見せてもらったことがある』
その本の後ろに挟まれていた白い上質の紙には、絵の具で塗られた『その色』が、確かにあった。
『この色だ……あの子と、そっくり』
ミラゼの言っていたことは、確かに正しかった。
翡翠葛。
『碧色』の…植物。
紙の色を見続ける俺に、終始リロザは眉を寄せていた。
…あの少女の髪色と翡翠葛の色が、俺の目に強く強く焼き付いていた。
*
「よ、リロザ」
部屋の扉を開けて中へ入ると、リロザは読んでいた本から顔を上げて、あの頃のように眉を寄せた。



