思い返せば、私はいつだって男に無関心だった。
小学校の時も、中学校の時も、今も。
一緒に遊んだり帰ったりするのも
いつだって女子ばかりだった
別に女子が大大大好きというわけではない
どちらかというと嫌いに入るかもしれない
それなのに女子とばかり一緒にいる理由は…

「おい」
「…」
「おい」
「…イラッ」
「おい」
「なんやねんさっきから!?」

男が大嫌いだからだ

「舞が反応せんのが悪いんじゃ」

そういえばまだ名前を言ってなかった。
私の名前は桜田舞。運動神経の良さだけは良いと自分でも思う。
そして私に話しかけてきたこのクソ野郎は一応幼なじみの寺田祐馬。

「…お前今さっき俺の事クソ野郎とか思ったやろ」
「それ以外のなんでもあらへんやろ。つーかそれがあんたの名前とちゃうの?」

またいつものような会話。早く帰りたい

(イラァ)「……それより」
「あ"ぁ?」
「俺と付き合え」
「……………は?」
「だから、俺と付き合えって」
「急展開すぎやろ…これ小説やで?キュンキュンのドキドキになるには早すぎやろ」
「意味がわからんわ」
「てかお前から告白とか何?気持ち悪いです」

私は告白というものが嫌いだ。これほど
不快に感じるものなど他にあるだろうか
大嫌いな男が私に好意を持っていると思うと吐き気が止まらない。だから私は毎回こう言う

「あなたは恋愛対象外です。」




祐馬side

俺は、今までで色んな女と付き合ってきた
でも 本気で付き合ったことなんて一度もなかった
すぐ落そうな女を見つけたら声をかけて
ちょっと他人より優しくしたらすぐ落ちる
そんで、ちょっと遊んで飽きたらポイ
自分でも最低だと思ったよ

でも 舞は違った あいつは俺の大事な幼なじみ そして、俺の一番大事な人。
赤ん坊の頃から一緒で 本当の兄妹みたいに育った俺たち

舞は小さい頃泣き虫で 甘えん坊で 寂しがり屋で 俺がいないと何もできない奴だった

だから俺が舞の家に行けないときは叔父が舞の面倒を見てくれていた

けど…

ある日、俺は舞から信じられない事を聞いた「舞が叔父に連れられ、体を売られていた」と…。

その事があってから、舞は変わってしまった。
最初の頃は男と時々話していたが
それもだんだん減っていき、
俺からも離れていった
俺は自分が許せなかった。
「なんでもっと早く気づいてあげられなかったんだろう」「なんで叔父に頼んだりしたんだろう」
あの優しい笑顔も、泣きじゃくる顔も、虫を見て怖がる顔がもう二度と見れないかもしれないと思うと、自分が憎くなった
その時の俺は後悔と憎しみしかなかった

やがて、俺たちは高校生になった。
…後悔と憎しみは薄れることなく…
高校に入学してはじめて舞に声をかけた

「おい」
無視だった。聞こえてないのかと思って
もう一度。
「おい」
また無視だった。やっぱ俺が嫌いなんだと思った これで無視だったら帰ろう
「おい」
「なんやねんさっきから!?」
返事が返ってきたから驚いた キレてるけど
俺は帰ろうと思ってたから
どう返事すればいいか迷って、とっさに舞のせいにしてしまった
きっと、今こいつの頭の中で俺はクソ野郎と呼ばれてるんだろう。