とにかく管理室から出ようとして扉を開けると彼、穂鳥叶都が立っていた。

「盗み聞きとかいい趣味だね」

一瞬ドキッと鼓動が跳ねる。

「好きで聞いていたのではありませんが、褒めていただいたと思っておきますわ」

どうも私は彼が苦手のようだ。

「扇命都…」
「まあ、私の名前をご存知で?とても光栄ですわ」
「"扇家"の跡取りくらい知ってる」

扇家というのにピクリと反応する。彼自身、私が扇家としてまとめられるのが嫌いなのは知っている様子。

「"扇家"の跡取り…ですか…わざと言っておられるのですか…?」

昔、扇家の跡取りだからといい、媚を売ってくるのが何にもいた。
それ以来、"扇家"とまとめられるのが嫌いになった。

家族や家が嫌いなのではなく"扇家"と言われるのが嫌で仕方がなのだ。

「さあ、なんのこと」
「いいえ、それで私に用があるのでは?わざわざ管理室に出向いたということは…それに脅すならもうとっくに脅されているでしょうし」