【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!




真面目な方だと思う。
真面目で、優しくて、和菓子には情熱を注いでいる。

「分かりました。その、好きな方がいるならはっりき言って、安心させてあげるとかするのは駄目なんですか?」

「好きな奴は……居ない。大切な奴には、」

幹太さんは少し口籠ってから、目を据えると冷たく凍てつくような低い声を出す。


「少し喋り過ぎた。忘れてくれ」

いつも通りの、不機嫌そうな怖いオーラを放つ幹太さんに戻ると、車から降りて私側に回るとドアを開けてくれた。


「ありがとうございます」

「いや、俺こそ面倒をかける」

苦しそうな、声。でも表情は変えなかった。
幹太さんみたいに強い人は、どうやって涙を流さないように保っているのだろう。

強くて、折れない芯があって、揺るぎなくて。
私もきっと彼の優しくて、優しいだけではないその芯の部分が未だに心の中から消えてくれないんだ。