お見合い?
お見合い?
「え?」
「圧力が凄いんだよ。お前に恋人が居るのは重々承知だが、――妹の時は断れたんだが桔梗の出産間近のせいでうちの親の頭の中がお花畑でな」
幹太さんが、低い声で早口で捲し立てるように話してる。苛立った様子だけど、こんなに話している幹太さんを始めてみた。
「聞いてるか」
「はい。お見合いですね」
「前はお前の妹だった。あんたが跡取りの予定だったから、俺とあの子をくっつけさせるつもりだったんどろ。なのに今はあんたとだ。手の返し用に腹が立つ」
ハンドルの上で指とトントンと落ち着きなく動かす。
人にストレス云々言っていたけれど、一番ストレスが溜まっているのは幹太さんみたいで笑ってしまった。
「笑うな。こっちは親父の技を盗もうと見ている耳元で、お前とのお見合いを打診されてまいってるんだ。修行にならん。お前には悪いが、――見習い中だからと両家の前で言うから、あんたから断ってくれないか」
『あんた』やら『お前』やら、呼び方が統一されていない程度に、幹太さんが焦って憤っているのが伝わってくる。



