深々と頭を下げると、ばつが悪そうに頭を掻きむしる。
それが照れている時の顔だと桔梗さんに聞くまでは分からなかったけど。
「ストレスが溜まる事があっても、この仕事ではないです。本当に今、充実して幸せですから。――ストレスというか忘れたくて考えないようにしていることはあるんですけど」
ははっと笑うと、幹太さんは嘆息した。
「送っていく」
もうちょっと会話を続けてくれてもいいのにと思いつつも、私もそれ以上はまだ喋りたくない内容だったからお言葉に甘えた。
いつも助手席には桔梗さんが乗るから私は後ろなのだけど、今日は後ろに大きなカバンがあったので前に乗った。
良く見れば、あのバックは桔梗さんの入院ようのバックらしい。赤ちゃんの玩具や離乳服なども置いてあった。
「ストレス与えるかもだが、言ってもいいか?」
家の前に差しかかった時、うちの家の壁に車を寄せると静かにそう言う。
もう少し前に進めば、お弟子さんたちが車に気付いて出迎えてしまうかもしれない距離で。
「はい」
「失礼だが俺とお見合いしてほしい」



