「なぜ、可愛い小鳥さんは泣いているのかな?」

 投げ捨てた扇を拾われそう笑われた。応接間の小窓が開いていた。
多分、母との約束で待たされている間、景観をと開けられたんだと思う。その景観を損なうような、声を上げて泣くことも許されないで、ただただ声を殺して泣く私の姿が見えて声をかけてくれた――優しい人。

だけど、今はその優しさは私を惨めったらしくするものでしかない。何も知らない人にしてみれば、この忌まわしい楔をほどけないのは理解できないはず。優しくされたって、逃げられない。

「貴方は、ここに自分の意志で来られたのですか? 自分で決めて、自分の足で」

「ええ。日本の文化にとても興味がありますので」

 扇をひらひらと舞わせながら、その外国人は笑う。
ブランド品の白のスーツにネクタイに時計。その時計は百万はくだらない高級品。スーツだって見るからに生地からして良い物を使っているのが分かる。

父も母も、家の近所にある外国の大使館に招待される事が多かった。招待され、舞いを披露したり、書道の体験をさせたりと交流を任されていた。
だからうちには頻繁に外国人の来訪がある。
この人もそうなんだろうな。
お金持ちの御曹司が自由気ままにできるのを、私はただただ醜い嫉妬で見上げていたのかもしれない。