「あの人とはもう良いんです。会わなくても」
思い出として割り切っていきたい。
そう思いたい。
「何? ちょっと大人になってる! ちょっとさ、仕事終わったら飲みに行かない? 話聞くよ、聞く。いや、聞かせて」
「飲みにって日高さん、妊娠中……」
「あはは、私はジュースジュース。鹿取ちゃんは堅いからさ、御酒で一回、自分を忘れるぐらい飲んで開放感を覚えるべきよ。行こう行こう」
豪快に笑うと、私の返事も聞かずにスマホで店を探し始めた。
決定事項らしいので、私も夜はご飯要らないと連絡しなくては。
食卓にブリザードが吹くかもしれないけど、私は変わると決めたから。鳥籠から抜け出して、自分で失敗して生きていきたいと。
だから、もう平気だ。
「あ、幹太を巻かないといけないや」
そう言うと、日高さんは盛大な舌打ちをした。



