だから私も真っ直ぐに目を見る。やはり、ちょっと怖いけど。

「そうです」
「嘘ん臭いけど、俺は知らないぞ」
「嘘臭いですか?」

あんな綺麗な瞳のデイビットさんが?

首を傾げると、幹太さんは小さく舌打ちする。

「そんなに隙だらけだから、俺なんかと!」

俺なんかと?
その次の言葉を待っても、幹太さんは黙ってしまった。
そのまま背を向け、蛇口を捻るとまた洗い物を再開する。

「お前がうちに来た意味を理解した時にはもうお前に選択権はなくなっているかもしれんぞ。しっかり流されるなよ」

口調は突き放すように冷たいけれど、きっと心配してくれてるんだと思った。

「ありがとうございます」

幹太さんの言葉の意味が分からないことだらけだったけど、考える余裕なんてどこにもない。
私は重くてキツいだけの私を鳥籠に縛り付ける鎖のような着物を巻きつけて、デイビットさんの元へ駆けだす。約束の夜を過ごすために。