「行くってあの……」
「ご自宅まで送りますよ」
数日ぶりなのにデイビットさんの顔は涼しげだ。
この前会った日から時間が止まっているかと思うほど。
上着を脱いで、薄い灰色のベストを着込んでいるデイビットさんは、雨の日でも素敵で。
日高さんが王子様と言うのが納得できる。
「でもちょっとだけ、待って頂けますか? 乗って下さい」
デイビットさんに促され、助手席に座る。
するとデイビットさんは後ろに置いていた白い箱を持つと私に差し出してきた。
「これ、は?」
「貴女をイメージして選んだ服です」
「服!?」
白い箱とデイビットさんを交互に見ながら慌ててしまう。
白い箱にはリボンが巻かれ、金色の英字でブランド名が書かれていた。私でも聞いた事があるようなブランド。
こんな小娘が着るような物ではない。
「駄目です、わ私、無理です、こんな高価な物」
「安心して下さい。お揃いに靴もありました」
後ろの座席の足元から今度は三つ、靴が入った箱を持ってくる。
「貴女の靴のサイズが分からなくて、三つ用意しました。履いてみて下さい」



