「あ……」
土砂降りだった雨の音が止む。いや、止んだように感じた。
びっくりするぐらい私は、二人の視線の先の彼に釘付けになった。
「美麗さん、お仕事お疲れ様です」
優しく笑うその顔と、後ろに止められていた車を私は知っていた。雨の色より優しい紺色のその瞳も。
「美麗さんを迎えに来たとお店の方に伝えたら、この駐車場で待ってて良いと許可を頂きまして。貴女が出てくるのを今か今かと待ち焦がれていましたよ」
「デイビットさん……」
ウインクして、胸をトントンと叩きアピールするデイビットさんは、差していた傘を閉じる。そして私の元へ歩いてくると私が差していた傘を奪い、一緒の傘へ入ってきた。
「送ります。車に乗ってくれますね」
「あ、えっと」
ちらりと二人を見ると、すぐに日高さんがパッと笑う。
「王子様に傅かれて素敵! 良いよ。王子様に送ってもらいなよ。行くよ、幹太」
日高さんも車に乗り込むと、幹太さんはデイビットさんを一瞥しただけでさっさと車へ乗り込んだ。
「じゃあ、行きましょうか」



