「……何してんだ。早くしろ」

休憩室前の廊下に、不機嫌そうな幹太さんが立っていた。

作業衣にパーカーを羽織っただけの出で立ちで、私と日高さんを睨み付けている。

「ごめんごめん。鹿取さんもいいよね?」
「最初からそのつもりだ」

深くため息を吐かれると、嫌々送るなら遠慮したいなって思う。

「お腹張っちゃったり悪阻が酷い時期からずっと幹大が送ってくれてるのよ。ラッキーよね」
「うるせぇ」

始終不機嫌そうな幹太さんと始終ご機嫌な日高さんの温度差に戸惑いつつも急いで着替えて、裏口から日高さんに続いて出ていく。

これから毎回、幹太さんが送ってくれるのだろうか。

裏口から出ると、白い砂利が敷かれた従業員用の駐車場に出る。
その道を傘を射し、二人の後ろをとぼとぼと歩いていく。
その時だった。

「すみません。――美麗さん?」


幹太さんが車のドアを開け傘を差して、日高さんが乗り込もうとしていた時だった。

私と二人は声がする方を振り返った。