着物もあまり好きではないのでダメージが大きい。
洋菓子店みたいな甘い香りがして、フリフリのエプロンドレス着て仕事とかしてみたい。


こうしなさい、ああしなさいと生きてきたけど、したい事が浮かび上がらず困っていた矢先でのこの割烹着。


「可愛いわよ。よく似合ってる」

「嬉しくないです……」


休憩室を出てレジに向かいながら、泣きそうになりながら無理に笑ってみせた。


「そう? まぁ確かに幹太とペアルックみたいよね。夫婦みたい」

クスクス笑う日高さんに、幹太さんが調理場の暖簾から顔だけ覗かせる。


「着替えたんなら早く来いよ」

「はいはーい」

しかめっ面の幹太さんに慣れっこなのか日高さんは怖がる様子もなくレジの方へと向かう。



私も余りに色々な出来事があるから、――彼との約束を忘れかけていた。