相変わらず、負ける賭けは絶対しないm、ズルイ人だ。
「寒いから早く部屋に入って。今、立花さんに白湯をお願いするから」
「ありがと」
美鈴は石を敷き詰めている庭園を横切って台所へ向かう。
じゃらじゃらとはねっ返りの足音を響かせて。
太陽が眩しくて、すぐに消えてしまう雪が儚くて、空を見上げた。
誰かに見られる間もなく、次々に地面へ落ちていく。
誰かその雪を見てあげただろうか。
ぽとりと落とされた雪は、誰かの心へ落ちて行ってくれただろうか。
伝わらない気持ちを、言い出せない気持ちを、誰にも見つからないまま地面へ溶けていく。
降り積もるまで見えない気持ち。
それでも、簡単に差しだされた体温で溶けていく。
だから、手を伸ばしてそれに触れていきたい。積もる前に温もりで溶かして欲しくて。



