「入らないのか?」
「いえ。ありがとうございました」
と言いつつ、鍵はないので押し鈴を鳴らさなきゃいけない。
立花さんが出てくればいいけど。
「そいうや、美麗も大使館には何度か行ったんだろ。何度行っても慣れんな。あの豪華な見た目」
なかなか入らない私に、幹太さんが私気を使ってくれた。
「見た目とか見る暇無かったです。デイビーから貰った手紙やあげた手紙、デートした時の写真とか二人の時間を切り取って提出しなきゃいけなくて恥ずかしかったので」
「デイビットさんとか、記念日とかマメそうだから問題はないだろ」
「……気持ちの問題なんです」
幹太さんも私の気恥ずかしい気持ちを分かってくれない。
手紙とかデートした時間とか、私は二人だけで共有する大切な思い出だから他人に見られたくないのに。
「幹太さんもマメそうですけどね。――大切にしてくれそう」



