【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!


「大丈夫ですか? 吐くなら向こうにレストルームが」

「いえ。やっぱちょっとお邪魔になるから大人しく帰ります」
多分、この甘い香りが漂うならちょっと吐いたり休んだだけでは駄目だ。
大人しく店番している方がまだ迷惑ではない。

「もう今日はこのまま家へ送る」
「え、でも荷物とか」
「後で届けるか、はねっ返りに取りに来てもらう。今は店の心配より自分の体調を優先しろ」
「美麗、そうしなさい。今は無理は禁物ですよ」

「……すいません。ありがとうございます」


結局迷惑ばかりかけて、私は何も周りに返せてない。
心配ばかりかけてしまう自分は、――いつになったらちゃんとした大人になれるのだろう。





送られて家に着くと、幹太さんが玄関まで着いてきてくれた。
家からは、琴や三味線の音が聴こえてくる。
小さな頃はこの音が聴こえてくると、家に帰る足取りが重たくなっていったのを覚えている。