「いえ。今日は久しぶりの晴れですが、気温はそんなに高くないです」
「デイビットさん。納品の確認お願いします」
いちゃいちゃしていた私たちに咳払いしながら幹太さんが近付いてくる。
彼の方が作業衣だけで鼻まで真っ赤にして白い息を吐いている。
台車に乗せていた和菓子はもうイベント会場へ持って行ったようで折りたたんでいた。
「はい。ありがとうございました」
「いえ。晴れてよかったですね。会場も綺麗でした」
「え、見たい」
「良いですよ。佐和子さんもゲストで呼んでますから、よければ隣に席を作るので美麗も参加しますか?」
「参加は無理だけど、お茶会風にしたって聞きましたよ。結局、鹿威しは――」
話の途中なのに、急に吐き気が込み上げてきた。
マフインと紅茶の甘い暖かそうな香りに、気持ち悪くなる。



