「春月堂から連絡を頂きまして、美麗が此処に来るからと」
「お仕事中じゃないの?」
飛び出してきたデイビーが、私の為に息を切らして走って来る姿は嬉しいけれど、迷惑じゃないのか不安になる。
「大丈夫です。あとはゲストを招き入れるだけですので。飾りつけはほぼ業者ですし、あ、でも和菓子の試食がしたいですね」
「もう」
ウインクするデイビーは、車のドアを開けて手を差しだしてくれた。
そしてすっと左腕を組んで、私をエスコートしてくれる。
「中で御茶でもしませんか。できれば、私だけ飛び出してきたので和菓子の説明とか、聞きたいですね」
「ふふ。何回も食べてるし、目を瞑っていても説明文、言えるでしょう」
季節の和菓子が良いからと、何度も春月堂へ赴き、試食と称してほぼ全種類は食べてしまっているくせに。
そう思いつつも大使館へと歩き出す。
お腹が大きくなって、実は車の中で座っているとちょっと腰が痛くなるので、歩いたほうが気分は楽だった。
「美麗は小さいのに、こんなにお腹が大きくなって――私は美麗がひっくり返らないか心配です」



