【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!



「よし。着いたが、ちょっと座って待ってろ。後ろに積んでいる和菓子、納品してくる」

停めたのは、イギリス大使館の南口。雪が積もった桜の木が良く見える。
門は開け放たれておらず、イベント開始時刻までまだ時間があるようだ。

台車に乗せた和菓子を押しながら、幹太さんが大使館の管理室の方へ向かっていく。


(このイベント準備で最近は一緒に夜ご飯食べてないんだからね)


定時にきっかり帰って来るデイビーが、イベント前になると忙しいのか楽しいのか、仕事に夢中で家に帰って来るのが極端に遅くなる。


お腹が大きくなる前にと、縁のある神社で身内だけの結婚式は済み、まだ悪阻もなかった時は少しづつデイビーの家に私の荷物を送っていたけれど、出産も出産後も家で少し御世話になるからとデイビーは、鹿取家に居候中。

だから、二人でゆっくり出来る時間も今はほぼなく、――ちょっと寂いしいけれど。
「美麗」

「デイビー?」
門から大声で私の名前を呼び、大股で走って来るのはデイビーだった。
私より朝早く出かけたから、今日は初デイビーだ。