「いいえ。私も桔梗さんも春月堂が好きだから、勝手にした事です。幹太さんの人望ですよ」
幹太さんが一人前と認められてすぐに、春月堂に大きな動きがあった。
高級老舗百貨店での二店舗目開店だ。
高級百貨店のデパ地下に店を出せるなんて、春月堂の御菓子が認められたのだ。
それと同時に、古くからの御付き合いで御店まで買いに来ていた方々からは、幹太さんの代は金もうけに走るのではと信頼関係でギクシャクしたりと不穏な空気が流れていて桔梗さんが間に上手く入ってくれてたり。
そのせいで工房に新たに3名新しい職人さんが入ったけれど、幹太さんより年上で腕もたつ人や何も出来ない見習いの若い人だとかで纏めるのも大変そうで。
そんな幹太さんが頑張っている中、辞めたくないと邪魔にならない程度に頑御手伝いしたいと思ったのは本当。
「逆にこんな風に悪阻で迷惑かけていますけど」
「そんなことない。――お前が気持ちを飲み込んで無理してないなら、な」



