「悪阻なのに無理して来るお前が悪い。帰らされたくないならさっさと車に乗れ」

「安全運転しなさいよ。美麗に何かあったら、デイビットさんが怖いわよ」

「当たり前だろ。早くしろ」

「はーい。桔梗さん、お願いします」

個人差があるとは言うものの、最近になって酷い悪阻が始まり仕事も休まなきゃいけない日が何日も続いてしまい今月で産休に入ることになってはいる。
けど、今日は忙しいの分かっていたからちょっとだけ無理してきていた。

忙しいはずなのにそんな私の事もしっかり見てくれている幹太さんには頭が下がりっぱなしだ。


「すいません」
「忙しい時に仕事を増やすな」

きつい言葉なのだけど、それが幹太さんの優しさなのだとこの一年近くで学んで分かっている。
だから素直に謝る。こうして周りに支えられて私は此処まで来れた。



「……お前だって早く産休に入りたかったろうに、店がごたついてて迷惑かける」

車にエンジンをかけて駐車場から出ると同時に幹太さんが切り出してきたソレは、半年前から頑張って来ている幹太さんらしい言葉で。