そんなに春限定の和菓子をお願いしたのを根に持っているのかちょっと言葉に刺は感じたものの、渡された和菓子は、見た目だけでも溜息がでるくらい美しかった。

和菓子の種類を覚えるために見ていた中で、とても綺麗で食べてみたいと思った和菓子。季節外れだったからおじさんに聞いたら出来ると言ってくれたのに。

幹太さんは、その季節が一番美味しい材料を使うから季節限定なんだと大激怒しておじさんに文句言ってたけど、おじさんは幹太さんより頑固だから譲らず結局作ってくれたんだ。

咲き乱れ舞う桜の華麗な姿を『桜すだれ』になぞり、桜葉入の道明寺羹にてあっさりとしたこし餡を包みこんだ和菓子。
ひな菓子や春の御祝いの席で人気が高い、春月屋の春の名物の一つでもあるのが頷ける、乱れ舞う桜を閉じ込めた美しい和菓子。

「幹太さんなら出来るだろうって麗子さんも太鼓判を押していたのですよ」

デイビーも大きな手のひらに桜すだれを乗せ、近づけたり離したりしてその美しさにうっとり眺めている。