「なかなか日本に来るチャンスがありませんでしたので美一さんに線香と、美麗さんに大使館イベントへ招待しに参りました」
白い封筒を取り出したデイビットさんは、桜の刻印が押されたそれを私に差し出す。
「賭けの続きはこの日に。御待ちしておりますよ」
「え、あのっ 私がですか?」
「はい。イギリスの食文化に触れるイベントですから、美麗さんに」
にこにこと微笑むデイビットさんは、私が招待状を受け取らずに困惑していると、手を掬い上げて握り締めるように手渡す。
「鹿取家の代表としての招待でしたらその子は未熟です。私が美鈴を連れていきますよ?」
母はお弟子さんが運んできたお茶と和菓子を机の上に置きながら、デイビットさんへ渡す。
デイビットさんは、首を振ると『いいえ』とはっきり答えた。
「私は美一さんを招待したかった。だから美麗さんを招待します。誰も美麗さんの変わりは居ません」
『美一さん』とデイビットは父の名前を親しげに呼ぶ。



