深々とお辞儀する幹太さんのその姿に違和感を感じた。
顔を上げて、幹太さんが少し優しい顔つきで私を見たから尚更。

「幹太さん、もうおじさまに認められたんですか?」

美鈴が身を乗り出し、うっとりした顔でそういうので漸く違和感に気付いた。
いつもの紺色の甚平の様な作業衣ではなく、真っ白な作業服。
帽子には、春月屋の家紋、桔梗の紋が描かれている。

「まあ、やっとな。これからは尚更気合いを入れていかなきゃいけない。今回みたいな無茶な注文にも対応できるようにな」

幹太さんは優しい顔つきではあるけれで、自分に厳しい姿勢は相変わらずだ。
真面目な幹太さんらしい発言に嬉しくなりつつも、和菓子の件は申し訳なかった。

「改めましておめでとうございます」
「いえいえ。こんな季節に桜すだれを注文してくる大物には感謝の気持ちでいっぱいです」