母のそんな言葉も昔は、刃物のように怖かった。
美鈴とだってわだかまりが残ったかもしれない。
そんな日常を変えてくれたのは、彼だ。

桜の花びらのように、ふわふわ舞い落ちるように私の前に現れた彼。

今もこうして私の心を満たせてくれる。

「あの、お、お、お兄さんもぬいぐるみ作るって聞いたんですけど実は私も作ってて」

「え、美鈴も!?」

真っ赤な顔で、デイビーを兄と呼ぶと、人差し指を合わせてもじもじし出す。
美鈴も作ってくれるのは嬉しいし、三体揃うと個性的で可愛いと思う。

「じゃあ、分からない所は三人で教えあいましょうか」

デイビーもとても嬉しそうだった。

「麗子さん、美麗さん、春月堂の幹太さんが御祝いの和菓子を届けて下さいましたよ」
「ってよ、美鈴」
つんつんと着物を引っ張ると、美鈴の顔が拗ねた様子になった。

立花さんは「ああ、桜茶!」と叫ぶと台所へ消えてしまう。
結納の時に飲む桜茶を忘れていたらしく、母も血相を変えて台所へ入っていった。

なので和菓子を取りに、私とデイビーと美鈴が顔を出した。


「本日はおめでとうございます」