ルールも私に決めさせて、余裕のデイビットさんは、スーツの上を脱ぐ。
中のベストは、引き締 まっ体を更によく魅せ、見とれてしまう
ほどだった。
こんなに男の人と話したり、近づいてじっくり見るのはお父さん以外初めてかもしれない。
短大まで女子校だったからそんなに男の人と関わった事ないし。
スーツのジャケットを縁側に放ると、花のような甘い香りがする。紅茶のように薫り立つような。
ついその香りに気をやられていた時だった。
「あ」
「あ?」
パチンと扇を開くと同時に、ひらひらと花びらが舞い降りてきた。
「…………え?」
勝負はすぐに着いた。ほんの一瞬で、神様が瞬きした瞬間に。
デイビットさんは舞い降りた花びらを指先で掬い、唇で優しく触れる。
桜の花びらは、デイビットさんの扇の中に舞い降りた。吸いこまれるように、引かれ合うマグネットのように。
目を見開いて口をパクパクする私の袖を掴むと、甘い口づけを落として。



