「ふふ。可愛いね。どこに居るのか分からないけど。写真だけで可愛い」
「美鈴」
「私、楽しみだよ」
その言葉に、涙が溢れてきた。母に宣戦布告するならば泣かないって決めていた。
でもギスギスした時もあったのに、こんな私を受け入れてくれるなんて。
溢れる涙は、袖で拭き取っても拭き取っても溢れてきた。
泣く私を、美鈴が抱き締めてくれる中、お弟子さん達も席を立てず息を飲んでいた。
そんな中、デイビットさんが静かに母へ言う。
「賭けをしませんか? 麗子さん」
「どんな?」
無表情の母は静かにそう言うが、デイビットさんも笑顔で言う。
「美麗と私の子供が、男の子か女の子か、賭けませんか?」
人差し指を立てて、少し首を傾げながらそう言う。
すると表情は変えなかった母が、大切にしているはずの三味線を乱暴に畳の上へ置く。
「不謹慎な! 宿った赤ちゃんで賭けるなんて!」
「ふふ。麗子さんは優しいですね。口下手で不器用ですが」



