「あら、じゃあ出て行くのね」
清々すると言わんばかりの澄ました顔。
きつい目も、突き放した声も小さい頃からずっと怖かった。
だから、言わなきゃいけない。
「弟子じゃなくなったら、優しいお母さんになってくれるのかなって思った日もありました。父みたいに優しい貴方が見たかった。でも、厳しいけど貴方も貴方なりに私を考えて育ててくれたからもう言いわけはしたくないです」
厳しく、跡取りとしての縛りは深かった。普通から少しズレた自分の運命を呪ったこともあった。けど。
「もう『お母さんが決めたから失敗した』と誰かのせいにして生きたくないです。性格まで可愛くなくなりたくない。私は、間違えても、自分で考えて生きていきたい。だから、決めました。この子を産みます」
エコー写真を畳の上に置き、母の元へ滑らせたが見ようとしてくれなかった。
それでも、もう私は飛び出さないし、母に遠慮はしない。
「お姉ちゃん」
「ごめんね。気まずかったら出てっていいよ」
母から視線を外さす、じっと見つめたまま美鈴にそう言うと美鈴は座りこみ、エコー写真を手に取った。



