「貴方はずっとそう泣いてきたんですか? 一人で」
辛かったでしょうに。
そうデイビットさんは言う。
私の気持ちを理解しようと、目を閉じて。
「母の命令は、鳥かごの中の私には絶対ですので」
「鳥かごの中でさえ自由に鳴けない貴方と私は会うために生まれてきたのかもしれません」
デイビットさんは、意味深な言葉を吐くと瞳を開けて桜の木を見上げた。
そして私には届かない枝に、長い手を伸ばし簡単に花びらに触れた。
――貴方と出会うために。
甘美で夢のような言葉。
「イギリス人は賭けが好きです。私と勝負してみませんか?」
「賭け?」
「私が勝ったら、泣くのを止めて一晩、私のモノ になって下さい」
「一晩、私のモノ?」



