結局、注文数を持ちがえていたけれど、電話ではうまくそこが聞きとれなかっただけで、おじさんもその数ならば引き受けられると胸を撫で下ろしていた。
大使館で、せっかく住んでいる国なのだからと日本を学ぶイベントの中で和菓子を食べるらしく、此処の和菓子を注文するらしい。
何はともあれ、解決できて良かったし、デイビットさんの動じないあの性格を改めて尊敬出来た。
これぐらい出来るからこそ、うちの母を恐れないのかもしれない。
「綺麗? 具合悪いですか?」
目の前で、手をひらひらされてはっと顔を上げるとデイビットさんが覗きこんでいた。
産婦人科の目の前で。
「美麗も緊張しますか? 私もです」
「え、デイビットさんが緊張!?」
嘘だ、と疑った目で見ると拗ねたように唇を尖らせる。
「私だって緊張しますよ。しかも、貴方との愛する子ですからね」
「デイビットさん」
嬉しい言葉かもしれないけれど、この先ずっと彼はこんな風にストレートに気持ちを表現していくのだろうか。



