「はい。美麗の勤めるお店ですから大使館でいっぱい薦めました。駄目でしたか?」
悪気なくにこにこ笑うデイビットさんに、気難しい顔をした幹太さんでさえ、肩の力を抜いた。
「和菓子は繊細で美しい見た目だが、うちは一個一個手を抜かないからな。何百個もとなると人手が足りない。すまないが」
「えっ数百個も頼んだのですか? 館長が?」
今度はデイビットさんが目を丸くする。
「電話、まだ繋がっているなら、代わって下さい」
そう言って、おじさんが電話の相手には見えないのに身振り手振りで説明していたのを代わってもらい、デイビットさんが対応した。
日本語も上手だと持っていたけど、所々全て敬語で堅苦しく聴こえてくることがあったデイビットさんだけど、やはり母国語は完璧だった。
流暢な英語に、森田さんはぼうっと見惚れているし、幹太さんも口を開けて見ていた。
「誤解でしたね。注文を私が通訳します。美麗はその間に着替えて来て下さいますか?」
テキパキと支持をしながら、上着を脱ぐ。
デイビットさんの身体の範囲が浮かび上がり、引き締まっているのがわかるベスト姿は、私も見惚れてしまう。



