「知らない人と婚約するのが貴方の使命ですか?」

優しい口調で言われる。やはりこの外人さんには理解できないんだろうなって思う。



「昔……算盤の進級試験でミスした事があったんです。すると母から夕御飯を抜きにされました」

厳しくて、母が片手を差し出せばお弟子さんたちは次々に扇や羽織る物やら差し出す。
小さな頃から、母が何か動くたびにお弟子さん達が動き回るのが奇妙で怖くて……私は母が苦手だった。



「そんな時に、最初はお弟子さんがこっそり夕食を届けてくれました。だけどそのお弟子さん……母にこっぴどく叱られて。凄く可哀想で私のせいだと胸が痛みました」

父だけは母に叱られても私に優しかった。

でも私は怖い。


母に叱られたお弟子さんがもう私には優しくしてくれないんじゃ、とか、私のせいで誰かに迷惑かけるんではと。


そう思うと鳴けなくなった。

鳥籠の中、声を殺して朝が来るのを覚えた。


「私は逆らっても自分でどうすればいいのか分からない。反対されたり叱られたら心が震えて何も考えられない。私が我慢すれば……」

「それは違いますよ」