だから、こんな事を言われても、信じないだろうし、認めないか、嫌な顔をするかもしれない。
一夜だけの関係だったのだから。
私を助けるための、人助けの行為だもの。
会いに来ないのが、何よりその証拠だ。
だけど、デイビットさん以外となんて
関係を持っていないのだから、相手はデイビットさんしかいない。
産んだら、宝石のように輝く金髪碧眼が生まれてくるんだ、きっと言い訳なんて出来ない。
怒り狂う母に此処を放りだされれば、餌の取り方も、飛び方も知らない鳥は死ぬだけ。
まだ、籠の外に世界があると知ったばかりの、弱々しい姿で。
(私が、馬鹿だったんだ)
お腹を押さえて、しくしくと涙が止まらなかった。
後から後から、熱い涙が頬を伝っていく。
あの人の、子ども……。私のお腹の中に宿っている。
呆然と畳を見つめることしかできなかった。
――失礼します、と襖の向こうから控え目な声が聞こえて来る。
「美麗さん、お客様に挨拶をと、奥様が」
襖越しに、またお手伝いさんが声をかけてきたが首を振ることしかできない。
「体調が優れないの。すみません」



