「おい」
売る場へ戻ろうとしたら、肩を掴まれた。
振り返ると、血相を変えた幹太さんだった。
「まだ行かれてなかったんですね」
「お前、今、吐いてなかった?」
「はい、ちょっと微熱が続いてたから」
「お前も馬鹿か」
頭をくしゃくしゃと掻くと、私を押しのけて売り場へ入り、山元さんに一人で接客をするように頼み、私の元へ戻ってきた。
「お前も乗れ」
有無を言わさないその迫力に、私は黙って従った。
病院に行けと言われて、駅まで送って貰う。
幹太さんはそのまま桔梗さんの病院へ戻るらしい。
病院なら家から近い場所にかかりつけ医が居る。
けど、私が敢えて遠くを選んだのは家のひとに見つからない場所で買って、見つからない場所で試したいモノがあったからだ。
何でだろう。
もし、その勘が当たったら、私の今からの人生は狂うかもしれないのに。
でも、一か月近く来ていないアレと、何故だが変わってしまった自分の身体に、私は……気づいていたんだから。



